2023年9月1日金曜日

スマートフォンの功罪

  センター長・脳神経外科顧問 森田明夫


早いものでこちらに赴任させていただいて半年が過ぎようとしております。今回が6回目のブログです。今回はやや自分にも皆さんにも耳が痛い話です。ぜひともお話ししておきたいエピソードがあります。

先日NetFlixを見ていたら超昔の孤独のグルメをやっていて、私の東京の地元の駒込が取材地でした。20121月放送開始とありますから12年くらい前でしょうか?すでにそのお店は閉店しています。出演者がよくタバコを吸うのが気になりましたが、その時に脇役で出ていたTKO(問題を起こしてほぼテレビなどに出なくなりましたが)の木下さんが電話でガラケーを使っていました。その頃は携帯電話はほぼ電話だけだったのかな?とはたと自分のこともわからなくなりました。

エピソードというのは、2002年のことです。松本で日本脳神経外科学会の総会が開催され、そこに私もまた信州大学の先生方もお世話になったMayo Clinicの主任教授のDavid G Piepgras先生という先生がゲストで招かれていらっしゃいました。晩にお食事を一緒にということになり、近くの焼肉店に出かけました。そこで卓についたところで、信州大学の教室員がガラケーを出して仲間に電話をし出したんです。それも数名が同時に。それを見たPiepgras先生、お店を出て行かれてしまいました。

先生曰く「うちでは食事中に電話は禁止なんだ!」食事は家族が仲間が集って話す場であり、電話をしているということは、別の人と繋がって、家族や仲間から離れているということで、これほど失礼なことはない! 

今の状況はどうでしょうか?それよりもっと酷いです。日本での食事の風景を見ると自分の家でも息子や娘と食事することもたまにありますが、好き勝手にスマホをいじっていろいろそっちに集中して、せっかく月1回くらいであったのに話はそこそこで自分の世界へ行ってしまっています。自分もどうかというと、思い起こすと随分と人を無視してスマホを使っていたような気がします。最近は極力、スマホは人との会話や食事中は避けるようにしていますが、かなり失礼なことをしていたように思います。スマホを見ている時は自分の世界にいて、食事の席や会話の席から遊離しているのです!あのような松本のエピソードがあったのに。実はそのことを思い出したのは、4月に米国LAで友人とその知人のチリの初対面の先生と私が食事に行ったのですが、私が選んだレストランが星は高かったのですが、実はベジタリアンのメキシカンという超変わり種レストランだったのです。チリの先生はお肉が大好きだったらしく、その食事の場で、その友人もチリの先生もスマホばかりを見ていて、ほぼ会話が途切れ途切れだったのです。私は変なレストランを選んだ私が悪いとも思いましたが、非常に不快でした。レストラン選びを失敗した自分にも、スマホいじりの仲間にもです。その時にあのPiepgras先生の言葉を思い出したのです。あの時、松本ではそんなに深く感じなかったのですかね。愚かです。今でも会話中に何かかわった情報や、知らない情報があると調べるためにスマホを出して調べてしまいますが、その時は一応相手がいたらお断りしてスマホを出すように心がけています。

その目で通勤・宴会や食事風景を見るようになると、日本では宴会や食事最中のスマホ見放題は大きく許容され横行しているようです。食事のテーブルを見ると半分以上のテーブルで会話から外れてスマホに見入っている人がいます。電車やバスでも乗っている乗客を見ると8割方はスマホに見入っていて、外に興味があるのは小さな子供と運転手!さんくらいでしょか?新聞や文庫本さえ最近は読んでいる人はおらずほぼ皆さんゲームでしょうか?まだKindleで小説や日経電子版でも読んでいてくれると良いのですが、、、

一方の欧米では先ほどのチリの先生は別格ですが、欧米で食事中にスマホを出している人をほぼ見かけません。スエーデンのレストランで全席見渡せる席から確認しましたが、スマホ出しているのは写真とっている人だけで、会話から離れている人はほぼいないのです。

これは何の違いでしょうか?特に日本人だからでしょうか?文化の違いでしょうか?欧米人は本当によく喋ります。よくこんなに喋ることがあるな〜〜と感心するくらいです。日本人の「黙って男はサッポロビール」の気性ですかね。だからって別の世界に行くのは話が違います。

日本でもスマホ決済やスイカ、交通ICにスマホやスマートウォッチを使っている人が多くなりましたね。先日紹介したフィンランドなどほぼ全てがスマホか電波模様のついたクレジットカード決済で何もかもがアプリで運用されます。電気自動車の充電スタンドも公道にたくさんレンタルが置いてある電動キックボードの使用も全てスマホアプリ決済です。お店でも現金を出している人はほぼ見かけません。なのでお金も綺麗ですね。スイスの紙幣などパリパリしています。一方でインドやトルコはまだまだで紙幣がボロボロ。でも510年後には日本が最も遅れた国になるかもしれませんね。スマートフォンは非常に便利で、すぐにわからないことも調べられるし、全ての連絡先も入っているし、コンピュータと繋がっていて文書だって引き出せる。もしスマホを無くすと人格さえなくしてしまった様に感じるくらいです。で、自分の世界(宇宙)もそこに入っていて、せっかく友人や家族と一緒にいるのに、そちらの宇宙に没入してしまうというわけです。

でも人とのコミュニケーションがせっかく対面でできる時には、ぜひその時間を大切にしましょう。人と話すこと。人の感情を感じること。人の考えを知ることはとても自分のためにもなるし、せっかくの時間を無駄にしないようにしましょう。

 

さて今月の雑談・お料理ですが、最近NefFlixで韓国ドラマのあまり面白いのがないので小林薫さんの出ている深夜食堂と松重さんの孤独のグルメをNHK Newsで和久田さんの番組が終わったら見ています。そこで出てきた食事を少し真似て作ったりしています。たらこ半生焼きとか赤ウインナーのタコちゃん焼きとかです。でも新宿ゴールデン街に本当にとん汁とご飯だけ(あとはできればなんでも作る)のお店があったらいいな〜〜と思います。今回Istanbulではあまり食事は楽しめませんでした。以前行った時は、黒海で採れたてのでっかいヒラメを塩焼きしてくれて、また豊富なオリーブやスパイスの料理がとても美味しかったのですが、、年齢いくと食事は日本食が良いです。

 

写真は日本の風景(最近行った小豆島、能登の写真)と食事

イスタンブールの風景(アジアとヨーロッパの梯です)と食事の写真です。





素戔嗚プロジェクトとしては、7月ですが、末に光の丘病院で馬屋原院長と石岡認知症センター長と認知症ケアの包括対策と予防などについてお話しをしてきました。8月末には第3回目の板橋千代美さんのWalkingのクラスを開催しました。また、9月第1週には脳ドック学会理事長、認知症薬認可の厚生労働省薬事委員でもいらっしゃる冨本秀和先生、山口でへき地医療の管理を行っている原田昌範先生にきていただいて医療者を対象とした講演会。101日には東京大学の飯島勝矢先生に来ていただいて市民公開講座を企画しています。脳の活性化、フレイル予防のためのことを先生の最新の研究成果も含めてお話しいただきます。

参加希望の方は事務局にご連絡ください。